離婚
弁護士が教える養育費について知っておいてほしいこと
夫婦が離婚をする際には慰謝料などお金の問題が発生してきますが、未成年の子どもがいると養育費の話が出てきます。養育費の話し合いを疎かにしていると、後で争いになるケースも珍しくはありません。子どもの健全な成長のために養育費は大切ですから、しっかりと決めておきたいところです。
この記事では、未成年の子どもがいて離婚をお考えの方向けに、養育費について知っておいてほしいことをご紹介します。
目次
養育費と慰謝料は別もの
養育費と慰謝料は離婚する際に発生するお金の問題ですが、それぞれの意味合いはまったく異なります。
離婚の際に問題となる慰謝料は、例えば、配偶者の一方が浮気・不倫をしたことや家庭内暴力をふるったことなどにより他方配偶者が受けた精神的苦痛に対する損害を賠償するものです。一方、養育費は、未成熟子が社会人として独立して自活できるまでに必要とされる費用であり、親の扶養義務を根拠に、一般的には、子どもが成人するまで月額で支払われます。どちらも子どものいる夫婦が離婚する場合に問題となりますが、まったく別ものです。
養育費の相場と請求方法と期間
では、養育費とは具体的にどのようなものなのでしょうか。以下では、養育費の相場と請求方法と期間などについて解説します。
(1)養育費の相場はどのくらい?
父母が離婚をする場合、子どもの監護に要する費用の分担についても協議で定めるものとされています。養育費の負担は、いわゆる生活保持義務とされており、負担義務者の生活水準と同等の生活水準を未成熟子が維持できるかという観点などから、その相場が判断されます。
養育費の相場の参考として、養育費算定表という裁判所の作成した資料があります。裁判所の調停や審判・訴訟においては、これを基準として養育費が定められます。この表は子どもの年齢や人数によって分かれていて、養育費を支払う側の年収と養育費を受け取る側の年収とを照らし合わせると相場がわかるようになっています。算定表は、裁判所のHPに掲載されています。
たとえば、3歳の子どもが1人いて、夫の年収が350万円で妻が専業主婦(年収0円)の場合、算定表のうち「表1 養育費・子1人表(子0~14歳)」の表を用います。この算定表を用いると、養育費の相場は月額4万円前後ということになります。ただし、算定表はあくまで参考という位置づけですので、これに拘束されるわけではなく、例えば、当事者で別の合意が出来ればその合意の内容によることになります。
(2)養育費を支払う期間はどのくらい?
養育費を支払う側と受け取る側のどちらであっても、気になるのが養育費はいつまで支払うのかです。これは、子どもの年齢や進学状況などが関係してきます。
養育費の支払期間は、子どもが成人するまでという取扱いが一般的です。
もっとも、当事者間の合意、進学状況などの個別の事情などによって、その終期を早めたり、遅らせたりする場合があります。たとえば、子どもが高校を卒業して働き始めるケースで、支払期間を18歳までとする場合、また、大学に進学するケースで、支払期間を22歳までとする場合などが考えられます。
子どもが病気である場合や障害者である場合では、さらに柔軟に対応していく必要があるでしょう。
理想は話し合いでの解決だが、揉めた場合は裁判所で決着
養育費は離婚した後でも請求できるため、離婚するときに決めていなかったり、「養育費はいらない」と言ったりする場合があります。ところが、後で子どもの養育のためにお金が必要になることがあり、揉める場合もあります。
離婚後に養育費の支払いで揉めないために、離婚するときに養育費の分担について定めておくことが大切です。話し合いでは、養育費の金額や支払時期、支払期間、支払の方法などについて取り決めますが、口約束するだけなく公正証書を作成しておきましょう。公正証書を作成しておけば、相手が支払わない場合でも法的な強制力により支払わせることができるからです。
※公正証書とは、公証人役場の公証人が作成する法的文書のことです。
話し合いがまとまらなければ、家庭裁判所へ離婚調停の申立をして、離婚と養育費について話し合いをします。離婚調停は家庭裁判所の調停委員が間に入って当事者が話し合いますが、まとまらないこともあります。その場合は、審判の手続により養育費の額を決定します。審判では、家庭裁判所の調査官が調査した結果や資料により裁判官が養育費を決定します。その際に基準とするのは、上記でご説明した養育費算定表です。
また、離婚訴訟を提起して、離婚と養育費について判決を出してもらい決着することも可能です。ただし、訴訟によって離婚を求める場合には、法定の離婚事由が必要となります。
まとめ
養育費は長期間にわたって支払い続けるケースがほとんどです。離婚する際にしっかりと話し合って取り決めておくのが理想ですが、話し合いがまとまらないようでしたら調停や審判、裁判などの手続を利用する必要があります。
自分で法的手続を進めるのがご不安な方は、お気軽にお問合せください。
東京大学法学部司法学科卒業。最高裁判所司法研修所修了後、裁判官に任官し、横浜地方裁判所、名古屋地方裁判所家庭裁判所豊橋支部、横浜地方裁判所家庭裁判所川崎支部判事補、東京地方裁判所家庭裁判所八王子支部、浦和家庭裁判所、水戸地方裁判所家庭裁判所土浦支部、静岡地方裁判所浜松支部判事。退官後、弁護士法人はるか栃木支部栃木宇都宮法律事務所勤務。
裁判官時代は、主に家事事件(離婚・財産分与・親権・面会交流・遺産分割・遺言)等を担当した。 専門書の執筆も多く、 古典・小説を愛し、知識も豊富である。 短歌も詠み歌歴30年という趣味も持つ。栃木県弁護士会では総務委員会に加入している。
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