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    不動産・相続

    遺産を相続することになった!ときに最低限知っておきたい必要な手続            

    遺産を相続することになり、どういう手続をしたらいいのだろうとお悩みではありませんか。

    人が亡くなると相続が開始しますが、事前に準備していなければ対応が難しい場合もあるでしょう。相続は正しい手続で行う必要がありますし、期限のある手続もあるため注意が必要です。

    この記事では、遺産を相続することになった方向けに、最低限知っておきたい遺産相続の手続についてご説明します。

     

     

    相続人の取りうる手段

    被相続人がなくなった場合、相続人としては、遺産に関して、単純承認、相続放棄、限定承認という3つの方法から選択することが出来ます。

     

    ①単純承認

    被相続人から積極財産だけでなく消極財産も含めて、すべて引き継ぐという方法です。特に手続をする必要はありません。

     

    ②相続放棄

    消極財産の額が積極財産より大きく、単純承認したのでは経済的に損をするので相続したくないという場合などに積極財産も含めて遺産を一切相続しないという方法です。相続放棄をすると、当該相続人は初めから相続人ではなかったことになります。

     

    ③限定承認

    すべての相続財産を引き継ぐのではなく、積極財産の範囲内で消極財産を引き継ぐ方法です。遺産の中に連帯保証債務が含まれており消極財産の額が確定しきれない場合やどうしても実家(土地建物)の所有権は相続したいなどという場合に、限定承認という方法を選択することが考えられます。限定承認は、相続人全員で行う必要があります。

     

     

    遺産を相続するための全体の流れと各種手続

    以下では、遺産を相続するための全体の流れと各種手続についてご説明します。

     

    (1)死亡届を役所へ出す

    まずは、医師に死亡診断書を作成してもらい、死亡届と共に市区町村の役所へ提出します。同時に、火葬許可申請書も提出し、火葬許可証を受領しましょう。

     

    (2)葬儀を執り行う

    受領した火葬許可証を葬儀会社へ提示して葬儀を申込みます。通夜から葬式まで葬儀会社が段取りをしますので、指示に従い葬儀を執り行います。

     

    (3)遺言書の有無をチェックする

    亡くなった方が遺言書を残していないか確認してみましょう。遺言書には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。遺言書を確認した場合、日付に注意しましょう。複数の遺言書がある場合、原則として、一番新しい日付の遺言書が有効な遺言書として取り扱われます。

    また、見つかった遺言書が自筆証書遺言あるいは秘密証書遺言の場合は、すぐに開封してはいけません。検認という手続をしないで開封することは、法律で禁じられていますので注意してください。検認とは、被相続人の最後の住所にある家庭裁判所へ申し立てて、封入してある遺言書を開封して遺言書の状態や書かれている内容を確認する手続です。遺言書の変造、隠匿や毀損を防ぐために行われます。

     

    ※自筆証書遺言とは、筆記用具を使って自分で紙に書いた遺言書です。Wordやワープロで作成された遺言は無効とされることに注意が必要です。

    ※公正証書遺言とは、公証人役場へ出向いて公証人に作成してもらう遺言書です。

    ※秘密証書遺言とは、自分で作成した遺言書を公証人のところへ持っていき、内容は秘密にして遺言書の存在だけを公証人に証明してもらう遺言書です。

     

     

    (4)相続人が誰かを調査する

    遺言書が見つからなければ相続人間で遺産分割について話し合うことになりますが、その前に法定相続人が誰かを戸籍謄本を取り寄せて調査する必要があります。

    ※法定相続人とは、法律で定められた相続人のことで、相続する順位と相続分が決まっています。

     

    (5)相続財産がどのくらいあるかを調査する

    被相続人の財産がどのくらいあるかを確認します。財産には積極財産もあれば、消極財産もあります。積極財産とは、現金、預貯金、有価証券、不動産、美術品、貴金属や自動車など財産的価値のあるものです。一方、消極財産には、借金、買掛金、ローン、未払いの税金、未払いの家賃や未払いの医療費などがあります。消極財産が多いときには、単純承認せず、限定承認や相続放棄を選択することも考えられます。

     

    (6)遺産分割について話し合う

    相続人が確定し、相続財産を把握したら、相続人を全員集めて遺産分割の方法について話し合います。

     

    (7)遺産分割協議書の作成

    遺産分割について話し合いがまとまったら、後々の争いを防止するため遺産分割協議書を作成しておいた方が良いでしょう。

     

    (8)相続財産の登記を行う

    被相続人の不動産を相続する場合は、相続人へ移転登記をします。登記をしておかないと、相続人は相続した不動産の所有権を第三者に主張できない場合があります。

     

    (9)税務署へ相続税の申告

    相続税を計算して、被相続人の最後の住所を管轄する税務署へ相続税の申告をします。相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に相続税の申告をしなければいけないことに注意が必要です。

     

     

    遺産を相続できない?そうならないために厳守すべき手続の期限

    遺産相続に関してはさまざまな手続がありますが、期限を厳守すべき手続があります。

     

    (1)相続放棄・限定承認は3ヶ月以内

    相続放棄と限定承認は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に手続をする必要があります。相続人が配偶者や子だけであった場合には、被相続人が亡くなったことを知った時から3ヶ月以内、ということになります。

     

    (2)準確定申告は4ヶ月以内

    亡くなった方は所得税の確定申告ができないため、相続人が代わりに行うのが準確定申告です。亡くなった年の1月1日から死亡日までの所得について、相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内に確定申告を行います。

     

    (3)遺産分割協議と相続税の申告・納付は10ヶ月以内

    相続税は相続開始後10ヶ月以内に申告して納付しなくてはなりません。また、相続税を納付する前までに遺産分割協議を終わらせて、相続人と相続分を確定させておく必要があります。

     

    (4)遺留分減殺請求は1年以内

    遺留分とは、法定相続人に最低限保障される相続財産割合のことです。たとえば、遺言ですべての財産を1人の相続人に相続させた場合、他の相続人は自らの遺留分を確保するため、財産の返還などを請求できる場合があります。これを遺留分減殺請求と言い、相続の開始と遺留分減殺請求の対象となる贈与又は遺贈があったことの両方を知ったときから1年以内、又は、相続開始から10年が経過した場合には、時効により遺留分減殺請求権が消滅します。

     

     

    法律知識のない者でも遺産相続手続ができるのか?弁護士に依頼すべきメリット

    遺産相続の手続は自分ですることもできますが、法的知識がない一般の方々には難しい面があります。その点、弁護士に依頼すると、以下のようなメリットがあります。

     

    (1)法的な知識を知らないことで損をするのを回避できる

    法的知識がないことで相続の場面で損をすることがあります。弁護士へ依頼すれば、相続で損をするのを回避することができる可能性があります。

     

    (2)弁護士が間に入ることで、感情的にならなくてすむ

    親族だけで相続について話し合うと、感情的になり関係が悪化するケースがありえます。弁護士が間に入ることで、当事者が感情的になるのを回避し、冷静な話し合いをする見込みが高まるでしょう。

     

    (3)法的根拠に基づいて話し合える

    一般の方々は法的知識が乏しいため、法的根拠に基づいた主張が難しいでしょう。弁護士であれば法的な根拠に基づいて正当な主張をすることが可能です。

     

    (4)財産調査をしてもらえる

    相続財産がどのくらいあるかを把握するには、被相続人の財産調査をする必要があります。被相続人と同居している親族がおりその方の協力を仰ぐのが難しい場合、財産調査が難航することになりかねません。また、金融機関にある金融資産を調べるのも手間がかかります。それらの財産調査を弁護士が代行してもらえるのは大きなメリットです。

     

    (5)手間のかかる手続を代行してもらえる

    遺産分割の話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所へ調停の申立をします。調停をする前に被相続人の戸籍を取り寄せたり、改めて財産調査をしたりする必要があります。弁護士へ依頼すれば、手間のかかる手続を代行してもらえます。

     

     

    まとめ

    遺産を相続するためにはさまざまな手続を行う必要があります。一般の方々は法的な問題への対応が難しく、手間のかかる手続に慣れていないことが多いでしょう。遺産相続の手続についてお悩みでしたら、早い段階で弁護士へ相談することをおすすめします。何かお悩み事がございましたら、お気軽にご相談ください。

     

     

     

     

     

     

     

     

     

    山口 伸人(ヤマグチ ノブト)弁護士

    早稲田大学法学部卒業。司法修習終了、ワシントン大学ロースクール修士課程修了、ハーバード大学客員研究員、ブラウン・守谷・帆足・窪田法律事務所パートナー、長浜・山口法律事務所を設立、東京山王法律事務所と改称し、今日に至る。

    第一東京弁護士会常議委員、厚生部委員会副委員長・綱紀委員会委員・人権擁護委員会委員・司法制度調査委員会委員・厚生部委員会委員・刑事法制委員会委員・選挙管理委員会委員、日本弁護士連合会通信傍受法組織犯罪対策法に関する拡大理事会委員など。

    (元)東京簡易裁判所民事調停委員

    (現)日本海運集会所仲裁委員

    (現)ハーグ条約(国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約)登録弁護士

    (現)日本弁護士連合会中小企業の海外展開支援事業 登録弁護士

    東京大学法学部司法学科卒業。最高裁判所司法研修所修了後、裁判官に任官し、横浜地方裁判所、名古屋地方裁判所家庭裁判所豊橋支部、横浜地方裁判所家庭裁判所川崎支部判事補、東京地方裁判所家庭裁判所八王子支部、浦和家庭裁判所、水戸地方裁判所家庭裁判所土浦支部、静岡地方裁判所浜松支部判事。退官後、弁護士法人はるか栃木支部栃木宇都宮法律事務所勤務。

    裁判官時代は、主に家事事件(離婚・財産分与・親権・面会交流・遺産分割・遺言)等を担当した。 専門書の執筆も多く、 古典・小説を愛し、知識も豊富である。 短歌も詠み歌歴30年という趣味も持つ。栃木県弁護士会では総務委員会に加入している。