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不動産・相続

相続人である兄弟姉妹が勝手に亡き親の家に住みついた場合の対応法

法律上正当な権利者を追い出すことはできない

 

母親の介護を主に姉がしていましたが、母親が死亡した後、妹夫婦が亡き母の家に住みついてしまいました。

この場合、姉は、妹に対し、「家から出ていけ!」といえるのでしょうか。

それ以外に、何らかの主張はできないのでしょうか。

 

今回は、被相続人である親が所有していた家に法定相続人である妹に勝手に住まれた場合でのもう一人の相続人である姉の対応方法についてお話します。

 

相続財産をめぐる法律関係

財産の所有者である被相続人が死亡すると、残された財産(以下「相続財産」といいます。)は相続人に相続されますが、この相続人が複数いる場合、相続財産はすべての相続人の共有状態になります(民法898条)。相続財産が家で相続人が子供2人の場合、その家の持分権の1/2ずつを各相続人が有することになります(民法887条1項、900条1号)。

 

とすれば、二人ともに家については正当な権利者ということになり、上記事案でいえば姉は、妹に対し「家から出ていけ!」とはいえないわけです。

 

これを法的にいうと以下のようになります。

相続により相続財産が共有状態になる(民法898条)と、民法の共有に関する規定(民法249条以下)が準用されます。

そして、共有持分権者の一人が勝手に共有財産である建物を使用している場合、他の共有権者はその建物の明渡請求ができるかについては、自己の持分によって共有物である相続財産全体を利用する権利を有していますので、その他の相続人の決議をもっても「当然には」明け渡しを求めることはできないとした判例があります(最判昭和41年5月19日参照)ので、この場合は事前にその者に家屋を占有させるという合意がない限り、明渡請求ができないということになります。

それでは、他の共有持分権者が何も主張できないかというとそうではなく、

家賃相当分の金銭につき自己の持分権の割合に応じた額を支払うことを請求することができます。

 

これについては、法的には不当利得返還請求(民法703条以下)ないし損害賠償請求(民法709条)をしていくことになりますが、最判平成12年4月7日は、単独占有をする権限があることの主張・立証がない事案につき、不動産の共有者が,不動産を単独で占有する他の共有者に対し,自己の持分割合に応じて,占有部分に係る賃料相当額の不当利得金ないし損害賠償金の支払いを請求することはできる旨を明らかにしました。

 

 

姉のとるべき対応

 

(1)話し合いによる解決

この場合二人とも権利者である以上、話し合いによる解決しかありません。

相続財産が建物以外に預貯金とかあるのでしたら、預貯金は姉、家は妹、家の評価額と預貯金の額が釣り合わなかった場合は、妹が姉に相応の金銭を交付するということが考えられます。

しかし、相続財産が家しかなかった場合、誰が家を相続するか話し合いで決めて、家を貰う方が貰わないほうにその家の価値の半分の額の金銭を交付するしかありません。

この点については、法的にいうと民法に明文の規定はないものの、契約自由の原則から、協議によりこのような形で分割するという方法は認められています。

 

(2)妹が頑なに家から退去しない、姉も家をあきらめない、あるいは、妹から交付される金額に納得がいかない場合

上記の話合い以外の方法(公的機関を間に挟む方法)での相続財産の共有関係の解消をするしかありません。しかし、協議以外の遺産分割前の共有関係の解消の解消については、共有物分割請求(民法258条)が許されず、遺産分割審判手続によらなければならないとするのが、最高裁判例の立場です(最判昭和62年9月4日)。

このような場合は、姉としては、不動産である相続財産の共有持分権を第三者に譲渡し、妹との関係で共有関係を解消するしかとるべき方法はありません。

その後は、その第三者が民法258条に基づく共有物分割訴訟を妹に提起して共有関係を解消するものと思われます。この第三者については、共同相続人である妹と身分関係にないので、遺産分割審判手続ではなく遺産分割訴訟によるべきものとされています(最判昭和50年11月7日)。

 

 

まとめ

遺言がなく、相続財産がきれいに二等分できない不動産の場合、相続財産をめぐって揉め事起こった場合、そのまま話し合いで決着がつかないと遺産分割審判手続によるしか方法はありません。

基本は相続人間での話し合いで解決するのが望ましいですが、このように揉める当事者同士だとお互い感情的になり、問題解決への道筋を見出すことができません。

 

この場合、然るべき第三者を挟んでお互い冷静になることが肝要です。

 

専門的知識を有する弁護士を挟んで話し合えば、例えば、話し合いがもつれた場合、このままいくと共有持分を第三者に譲渡することをほのめかして他人と共有の家に住むことに抵抗のある心理をついて交渉のテーブルにつかせたり、あるいは、不動産を売却した場合には相続税の他に不動産譲渡税がかかり結局お互いの取り分が少なくなり、お互いにとってよい結果とはならないことを双方の当事者に説明するなどの説得と交渉技術を用いて、お互いにとって最良の結果となるような解決をもたらすことができます。

何かお悩み事がございましたら、お気軽にご相談ください。

 

 

 

 

 

 

東京大学法学部司法学科卒業。最高裁判所司法研修所修了後、裁判官に任官し、横浜地方裁判所、名古屋地方裁判所家庭裁判所豊橋支部、横浜地方裁判所家庭裁判所川崎支部判事補、東京地方裁判所家庭裁判所八王子支部、浦和家庭裁判所、水戸地方裁判所家庭裁判所土浦支部、静岡地方裁判所浜松支部判事。退官後、弁護士法人はるか栃木支部栃木宇都宮法律事務所勤務。

裁判官時代は、主に家事事件(離婚・財産分与・親権・面会交流・遺産分割・遺言)等を担当した。 専門書の執筆も多く、 古典・小説を愛し、知識も豊富である。 短歌も詠み歌歴30年という趣味も持つ。栃木県弁護士会では総務委員会に加入している。